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漆と金粉や貝や炭を画材として描く、蒔絵の世界。非常に高度な技術と感覚を要する表現法です。しかも、根気がいります。
上は、樋渡さんが蒔絵を施した漆器の作品画像です。
上段は棗(なつめ)です。うちわの意匠です。この蒔絵を施すのに、約3ヶ月かかるそうです。漆を利用しての表現ですから、描く・乾かす・研ぎ出すの繰り返しを、何度もおこなうそうです。
下段左の意匠は、カタバミとスギナ。右の意匠は雪の結晶です。
これらの意匠の線は、すべて手描きで描くそうです。直線も定規を使わずに書いているというから驚きです。恐ろしい筆さばきですね。
蒔絵に使用する筆は、ねずみの毛の筆が最上と言われてきたそうですが、現在ではねずみの毛の筆は作られておらず、蒔絵師はおもに猫の毛の筆を使うそうです。猫の毛の筆といっても、一本一本腰も違い、用途に合うものを使い分けるそうです。ねずみと猫、追うものと追われるもの、どちらの毛がほんとうは良いんでしょうね。
蒔絵に使用する金粉や銀粉も、その細かさによって表情が変わるそうです。青貝にはアワビや夜光貝があり、蝶貝にも種類があるそうです。その他にも、炭の種類などもいろいろあるようですし、全ての素材が厳選された最高のものでないとならないようです。
樋渡さんの作品には、樋渡さん独自の空間美と伝統の美意識の両方を感じます。どちらも樋渡さんのこだわりだと思われます。そして、仕事の質を絶対に落とさないという、断固とした並々ならぬ決意で仕事をされているのがわかります。 |

樋渡さんの実家は、漆器の産地で代々漆器製造をしてきた家系です。お父さんも漆の塗り師です。
樋渡さんは、実は蒔絵師になるつもりはあまり無かったようなんです。高校の時は公務員志望だったんですって。クラブは剣道部で、美術部というわけでも無かったようです。
それが、学校の先生がたまたまテレビで見た漆芸の研修所を薦められて、入ったのだそうです。
石川県立輪島漆芸技術研修所の蒔絵課で学んだのだそうです。生徒3人に、一流の先生が教えに来ていたようです。すごいですね。
漆器の産地では、販売しやすい製品を作ることに頭を痛めています。産地のホームページなどを見ると、漆のことを語りながら、実際には練り物(樹脂製品)にウレタン塗装を施したものを、普通に販売していたりするのです。単価や扱いやすさを優先しての結果かもしれませんが、何かが違うような気がしますね。
そういう漆業界の中で、手間をかけた優れた技術の仕事をしていくというのは大変なことだとは思いますが、独自の蒔絵世界を作っていって欲しいと思っています。
ちょうど、このページを作っている、2003年3月。樋渡さんは、歴史的な漆製品の修復も手がけている有名な漆芸家の工房に仕事をしに行きました。3年の予定で、文化財の修復などの仕事を手がけてくるそうです。古今の名手の仕事から、さらに多くのことを吸収して、技術と感覚を深めてくるのではないかと思い、楽しみにしています。
写真では、樋渡さんはなにやら彫刻刀を持っていて、蒔絵を施しているところではないようですね。貝にレリーフを彫っているところだそうですよ。 |
画像:樋渡 文章:辻永
画像に関わる権利は、樋渡氏に帰属します。
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