クラフトマン辻永の身近にいる物作りに携わる人たちの紹介です。おもに2003年ころに書いた記事です。
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金工:内藤健一
(KENT)

KENT作品
目貫 目貫
 金工師 内藤さんの仕事。上段の作品は1枚の銀の板を打ち出しした作品です。仕上げは金消しと言われる、古来からのメッキ法です。奈良の大仏などにも行われているメッキ法だそうです。1枚の板がどうしてこんなにも姿を変えるのか、作品を見てもその工程はなかなか想像することができません。「打ち出し金具」・「高肉彫り」と言われる技術です。伝統工芸のすさまじさを見る思いです。
 花びらの一枚一枚を寄せていき、一枚の板から菊の花を作ることもできるそうです。

 下段左右の作品は、日本刀の刀身を柄に留める時の目釘孔に打ち込む釘を隠す、「目貫」と言われる金具です。色彩豊かな作品は「色絵金具」と言われるものだそうです。この色は、色の違う金属の板の象嵌によるものです。象嵌する部分を彫り、その部分に色の違う金属をはめ込んでいくそうです。象嵌する部分をアリに彫り(テーパーを付けて彫る)はめ込むというのですが、私には想像を絶する作業です。

 鮮やかの鯉の金具も、着色したのではなくて、金属を象嵌しているのですよ。赤銅・四分一銅・青金・赤金・紫金・銀などの色金(いろがね)を使っています。

 地金から、このような形や色を作り出すなんて、粋な仕事ですね。


KENT作品 KENT作品 KENT作品
 もともと伝統工芸の仕事をしていた内藤さんですが、ジュエリーの仕事もたくさんしています。若い頃にメキシコに2週間の予定で遊びに行ったところが、お金が無くなってしまってメキシコの宝飾屋さんで仕事をしたそうです。それまで宝飾の仕事をしたことのなかった内藤さんは、宝飾屋さんには「何でもできる」と言って必死に自分を売り込んだそうです。
 2週間の予定が、その後5年もメキシコで仕事をしていたんですって。

 左の作品は、内藤さんが初めて作ったジュエリーです。初めてでもこんなにすごい。常人ではないですね。タンザナイトという石を使っているそうです。「丹沢で取れるんですか?」 と尋ねたら、「タンザニアだよ」 と笑われてしまいました。

 中央の作品は、牡羊座のお客様のオーダーだそうです。写真ではわかりにくいかもしれませんが、羊の頭部のデザインの金具です。このトップの部分で開閉するそうです。チェーンも内藤さんが作った物で、右側と左側で左右対称のひねりになっています。

 右の作品は、打ち出しのアクセサリーですが、貝の巻がこの作品もそれぞれ対称に作られているんです。貝の表面にはごく細かいラインが彫刻されています。伝統工芸の技ですね。


KENT
 内藤さんは、いつもサングラスをかけています。ちょっと見ると怖そうな印象があるかもしれないのですが、話をするととてもおだやかで温かい人です。

 東京の下町で生まれ育った人で、おじいさんも金工師、お父さんは革の職人だったそうです。物作りの血筋なのですね。

 内藤さんの超絶技巧を拝見すると、訓練しても到達することのできない領域の感覚を、持っていらっしゃるのではないかと思われます。

 物作りの技はとても真似できないので、私が真似させていただいているのは内藤さんのせりふです。腕のある人が言うから格好良いのかもしれないけれど、私も「俺、仕事嫌いだからねぇ。」という内藤さんの決めぜりふをときどき拝借しています。内藤さん、すいません。

 いつか内藤さんの金具をあしらった革の作品を作ってみたいと密かに思っているのですが、内藤さんの金具に見合うものをどうやって作ればいいのか、まったく想像もつかないのであります。

 内藤さんは、秋田市の公立美術工芸短大付属高等学院に金工を教えに行っています。内藤さんのデスクには「非情金工師」の札が出ているらしい。わかります!?

KENT作品
 最後に、この作品は内藤さんのおじいさんが作りかけていた香炉を、内藤さんが仕上げたものです。

画像:内藤   文章:辻永
画像に関わる権利は、KENT・内藤氏に帰属します。

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