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革仕事辻永流
 自分の仕事を語るには早いので、自分の好みを書いてみようと思っていたのですが、いざ書くとなるとなかなかまとまりませんでした。

 私の物作りは、「古くからあるタイプの革と古典的な技法による物作り」となるかもしれません。くだけた言い方をすると、「そんじょそこらの普通の革で、普通の技術で作っている」と言うところでしょうか。変わったことは何もやっていません。

 革を始めた頃のことから書き出して、あとは思い浮かぶままに書きました。私の仕事の方向が、何となくでも伝わるといいのですが…。



「革を始めた頃」

 初めて革を自分で買ったのは、高1の時でした。ずっと牛スエードだと思っていたのですが、もしかしたらあれは豚スエードだったのかもしれません。

 金具でガチャガチャ革の周りを止めて、粗末な袋を作ったり、自分の筆入れを作ったりしていました。最初はホックという物を知らなかったので、筆入れの留め具は木を削って作り、それにひもを引っかけるような構造にしていました。

 その中で、B5判くらいの大きさの袋を、近くの席の人がクラブの集金袋に使ってくれるというので、買ってもらった記憶があります。確か300円くらいだったかな。記念すべき最初のお客様でありました。

 物作りの仕事をすることは、中学の時に決めました。なぜ物作りだったのかは、いろいろな理由があるのですが、ここでは省略します。物作りの中でも、本当は木工か竹工をやるつもりだったんです。初めて革を購入して、いい加減な物を作っていた時も、おもしろいとは思いましたけどただの遊びとしてやっていました。

 それがいろいろな偶然が重なって、革を本気でやってみようと思うようになりました。いろいろあった中でのだめ押しは、実は高2の時に書店で手にした1冊の雑誌でした。私の進路を左右した本ではありましたが、立ち読みで済ませてしまったので、書名はうろ覚えです。確か別冊宝島の「道具の本」というような書名ではなかったかと思います。立ち読みも馬鹿にできませんね。

 立ち読みではなく座って読んでいましたが、この頃は授業を「有効利用」して年間100冊以上の本を読んでいました。もちろん授業とは関係ない本ですが…。あれほど読書向きの時間はなかったと、つくづく思います。静かで集中できたなあ。(うちの子はけっこう本好きです。それだけに、この文章は子どもに読まれるとまずいですね。「よい子のみんな、勉強するんだよ。おじさんは数学と化学がわからなくて、今とっても苦労しているのだ。」)

 話を戻してその立ち読みした本なんですが、いろいろな道具のことが書いてあって、その中に革のページもありました。革包丁とスイヴェルナイフの写真が載っていたような気がします。変な形をしていて、印象的でした。

 そして、レザーカービングの写真も1枚載っていたのです。その写真を見た時に、衝動的にカービングをやりたくなってしまったのです。それまでに少しずつエネルギーのたまってきていた、私の思い込みと勘違いのクラフト人生の発射スイッチが、そこで押されてしまったようなのです。

 でも、なぜカービングに強い興味を持ってしまったのでしょうか。その時は理屈ではなかったのですが、おそらくそれが意外性の大きな物だったからではないかと思います。革は、しなやかで柔らかいものだと思っていたところに、レザーカービングという技法は、あまりにも意外な物でした。

 う〜ん、立ち読みで人生決めるとは、文字にしてみると、なんだか冴えないスタートです。もうちょっと格好いい単語を出したいところなのですが、何も思い浮かばないから、やっぱりあの立ち読みが私の背中を強く押したんですね。


 上の写真は、授業中に描いていたパターンと、それをカービングした革。カービングはもちろん自宅でやりました。バイトして道具と材料を買って、本を見ながら自己流でやっていました。
 けっこう上手いじゃないかと、勘違いと錯覚を起こしてしまった私。ここら辺から気持ちは突っ走りました。



 その後もいくつかの出会いや偶然があって、革の勉強をしていくことになります。でも、その話は本屋の立ち読み以上に格好悪い話ばかりなので、思いっきり省略して今に至ることにしてしまいましょう。

 革を始めた頃の話を描いたのは、ウエスタンやアメリカンという良く耳にするキーワードやバイクファッションとは無縁のところで、私が革を始めたということがわかりやすいと思ったからです。

 私はただ、革に惹かれていました。それと、革を始めて間もなく、理解不可能なすごい作品を見てしまったのです。それも本の中だったのですが、すごいのはわかるんだけど、その頃の私にはまったく読み解くことのできないパターンでした。自分には作ることができそうもない物を見てしまったこと、それが革を続ける原動力になりました。いつか自分もそこに行ってみたいという気持ちが、頭から離れなくなりました。私にとっての最大の幸運は、その作品を作った人との出会いです。

 このあと、技法について少し書くつもりですが、以上のような革のスタートが、私のクラフトの内容には影響していると思っています。

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「レザーカービング」

 レザーカービングは、皮革独特の装飾技法です。Leather Carving=皮革の彫刻という意味になります。革を圧縮して凹凸を付けることによって、表現していく技法です。おもに、刻印をハンマーで叩いてて凹凸を付けます。タンニン鞣しの皮革に施す、パウンディング(pounding:強く何度も打つこと)による圧縮彫刻法ですね。

 初めてレザーカービングを見た時、正直言って訳がわからなかったです。訳がわからなかったから、やってみたくなったのかもしれません。

 むかしラジオか何かで聞いたことなので本当かどうかは怪しいのですが、かのピカソが「人は自分に理解できない物をすばらしいと思うんだよ。」というような感じのことを言っていたとか。(本当に怪しいです。間違っていたらごめんなさい。)確かにピカソもわかりにくいし、カービングもわかりにくいです。(えっ、ピカソと革を一緒にするな。はい、ごもっともです)。

 レザーカービングは、革の伝統工芸(日本お役所の決めた定義とは関係ありません)の一つですが、いろいろなスタイルがあります。その中で私が主にやっているのは、唐草のパターンです。

 唐草のパターンにも、いろいろありますが、人それぞれに工夫してパターンを起こしているのだと思います。私も、自分のパターンを描きたいと思っておりますが、なかなか難しいことです。植物をモチーフとした装飾模様ですから、無からパターンが生まれるわけではありません。伝統工芸としての歴史的な流れ・様式・自分の線のクセ・影響を受けたパターンなどがあります。その中から、自分のパターンを作り出すことができれば良いのですが、本当に難しいですね。



「カービングの仕上げ」

 カービングした革をどうするか、それもいろいろな方法がありますが、私はほとんど生成仕上げにします。私の中では、最も難しくまた最も革らしい、そして最も楽しさを感じる仕上げ法が、生成仕上げです。

 生成仕上げと言っても、その方法にはいくつかの方向があります。いずれにしましても、革の状態・使用する道具・カービングの技術・仕上げの技術など、全てがうまくいかないと良い結果にはならないようです。

 生成仕上げにしたものは、上手くできればコントラストやその革の味わいが出てきます。いくつかの要素の中で、何かがうまくいかないと、結果は思い通りには行きません。

 自分の技法にあった革に出会うことができるととてもうれしいのですが、現在の革事情の中では、なかなかお目に掛かることができません。どうやら、古い作り方の革が私には合っているようなのですが、その手の中でもカービングに向く物は限られているような気がしています。

 タンニン鞣しの皮革は、自然の味出しのある革です。もともとその革なりの表現力を持っているのです。その革がどういう表現力を持っているのかによって、私も物作りを考えなくてはなりませんし、自分で表現したい物に合う革を見つけることも大切なことですが、思い通りの革とはなかなか出会うことができません。

 仕上げに使うオイルなどは自分で作っています。市販の物で自分に合うものがなかったので作るようになりました。こういうところも私のクラフトは原始的です。最新や最高と言われる物ではありませんが、自分にはあっていると思い使っています。


カービングベルト
 カービングしたベルトを生成仕上げにしたものです。最初はもっと白っぽいのですが、時間の経過と共に色も変わり味が出てきます。いろいろな要素があるので、どのように変わっていくかは、作った私にもわかりません。だから楽しいのかも。

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「コバ(切り口)の仕上げ」

 表面の仕上げについて書いたついでに、コバ(切り口)の仕上げについて少し説明します。タンニン鞣しの皮革では、コバは磨いて仕上げることが多いのですが、私もそのようにしています。市販品には、合成樹脂で仕上げられた物も多いようです。

 合成樹脂はそれなりに高機能できれいに見えます。現代では、みんなが見慣れている一般的な仕上げです。私も必要に応じて使うことがあります。

 でも、タンニン鞣しの皮革に対するコバの仕上げでは、天然のフノリで磨きロウでまとめるというのが、私の好きな方法です。

「仕立て」

 カービングや仕上げを施した革は、額に入れたりパネル状にして飾りにする場合もありますし、財布やバッグなどに仕立てることもあります。カービングの有無にかかわらず、仕立ての技術は革の物作りの基本です。

 仕立てにもいろいろあり、手縫い・ミシン縫い・革ひもかがりなどの方法が一般的です。この中で、革ひもによるかがり仕立ては、私はあまり行わないのですが、革らしい独特の雰囲気があるので、良いものだと思っています。

 手縫いかミシン縫いかと言うところでは、どちらも必要に応じて使っています。手縫いは好きですが、素材の特性や作る物の構造により、ミシン縫いのほうが適していることもよくあります。逆に、手縫いでないと作ることのできない構造の時もありますし、必ずどちらと言うことはありません。



ペンケース
 これは、木型に合わせて成形したケースです。この手の物は私のミシンでは縫うことができないですし、手縫いが似合いますね。珍しく染色した製品です。何のケースかというと、特注で作ったペンケースです。



 手縫いにすると手間も時間も掛かりますが、手縫いならではの独特の趣があります。手間を掛けるだけの意味はあると思います。

 革の手縫いでは、下穴をあけてから一目ずつ縫い締めていきます。穴は斜めに傾いた細長い穴をあけるので、独特の整った縫い目になります。おそらく武具や馬具の歴史の中で完成されてきた技法なのでしょう。

 いつの時代にどこの誰が考えたものなのか。過去の工人のおかげで、現代も合理的な仕事ができます。感謝。感謝。

 本当に合理的できれいな手縫いの技法ですが、丸穴と手縫い用の菱目の穴とどちらが丈夫かという比較をして、丸穴が丈夫だという結論を出している人もいます。(縫いの強度ではなく、革そのものの引っ張り強度です。穴をあけることによって革が切れやすくなるという意味です。)それで、ドリルで厚い革に穴あけをしたりするようですが、これも一つの合理性でしょうか。

 手縫いにはいくつかの要素があります。糸・ロウ・穴あけ・縫う技術などです。それぞれの部分について自分なりに考えるのですが、奥が深くてなかなか難しいです。

 仕立てについては、「手縫いは好きで、それなりにこだわる部分がある。ミシンも普通に使っている。」手短にまとめるとこのような感じです。





 いろいろと書いてきましたが、どうも散漫な文章になってしまいました。「革仕事辻永流」という題には、今ひとつ合っていないかもしれません。

 単に私の好みを言わせていただくと、「ヌメ系の革が好きで、カービングが好きで、手縫いも好きで、革らしさのある物が好き。」なんです。そういう自分の好みに基づいて、使用する道具や技術を変えてきました。かなり絞り込みをしているので、仕事の守備範囲は広い物ではありません。

 合成樹脂べっとりの物や、革でなくても良いんじゃないかなという物には、あまり興味がありません。でも、造形的にすごくおもしろいと思う物もあって、そういった物については、革の一つの可能性を感じてしまいます。私の感覚も、ご都合主義と言ったところでしょうか。

 技術も感覚もまだまだこれからといったところですが、少しでも向上できるように、革に接していたいと思います。


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